「些細なことながら、このようなニュアンスの違いの積み重ねによって読者は、少しずつ、しかし確実に原典から遠ざけられて行く。」その一六 5-(1) たまたま最近になって、これを読みました。中央公論新社のホームページです。
この『文学的パリガイド』の著者は誰か? 右の記事には著者名がありません。そこで、私はべつの図書検索サイト(e-hon)]で調べてみました。著者は鹿島茂です。ところが、同じ画面に当の中公文庫と並んで、もう一点、その親本が表示されていたんですね。「出版社名 日本放送出版協会」(NHK)、「出版年月 二〇〇四年七月」。 つまり、おそらくこの本はまるまる五年間誤ったままだったということです。日本放送出版協会の編集者は出版時に当該箇所をチェックしていなかったし、以後も誤りに気づかなかった。さらに、中央公論新社の編集者もチェックなどせず、親本の原稿をそのまま文庫として流したわけです。著者についてはいうまでもありません。 たぶん、文庫化を機に、親本よりも広範な読者がついたために、そのうちの誰かからの指摘があって、初めてこの誤りに気づいたということでしょう。 |