連絡船 ── 亀山郁夫訳『カラマーゾフの兄弟』がいかにひどいか



「些細なことながら、このようなニュアンスの違いの積み重ねによって読者は、少しずつ、しかし確実に原典から遠ざけられて行く。」その一六


   
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 東京書籍からメールが来ました。
 文中に「四月十三日付のメール」とあるのは、前回の文章(四月十二日)を私が夜中に書き、日付が変わってから送信したためです。

木下和郎様

謹啓

四月十三日付のメールの返信をいただきありがとうございました。
今回の件ではたいへんなお手間をおかけいたしまして、申し訳ございません。
また、弊社のメール文書や電話応対でご不快な思いをもたせてしまいましたことを、お詫び申し上げます。
ご指摘の内容につきましては、数度にわたり著者・編集スタッフで検討いたしております。
現在の経緯につきましてお伝え申し上げたく存じますが、メール等ではなく、直接お会いしてお話しさせていただけましたなら幸いでございます。
日時と場所は、木下さんのご指定にしたがいます。
お忙しい毎日のことと存じますが、どうかお時間をいただけますよう、ご配慮のほどよろしくお願い申し上げます。

敬具

二〇一〇年四月十六日

東京書籍株式会社
出版事業部 第二編集チーム
植草武士

 私からの返信。

 東京書籍 出版事業部 第二編集チーム 植草武士さま

 メールをありがとうございます。

 私は直接にお会いしたくありません。まだ勘違いなさっているようですが、これは私個人とあなたがたの問題なのではありません。一般読者とあなたがたとの問題なのです。
 あなたがたとのやりとりはすべて公開で、つまり、この「連絡船」上で行なわれるべきです。今回のようなケースで、出版社がどのように対処するのか ── 最先端=亀山郁夫の仕事に絡めて ── 強い関心を持っているのが、きわめて少数とはいえ、「連絡船」の読者です。彼らにすべてを伝えたいと思いますし、もちろん、もっと大きい数の、『10代をよりよく生きる読書案内 海外編』の一般読者たち、それから、たとえば、全国の学校図書館の先生がたにも知ってもらいたいのです。

 ですから、私たちの今後のやりとりはすべてメールにてお願いします。そのすべてを私は「連絡船」で公開します。

 ところで、あなたがたは「四月十三日付」の私のメールをお読みになりましたが、翌十四日夜における『10代をよりよく生きる読書案内 海外編』の「出版記念会」はいかがだったでしょうか? これも「ご指摘の内容につきましては、数度にわたり著者・編集スタッフで検討いたしております」のうちの一度なのでしょうか?

 誠実なお返事をお待ちします。

 木下和郎


 さて、四月十四日における『10代をよりよく生きる読書案内 海外編』の「出版記念会」について私が知ったのは、この本の著者のひとり岩辺泰吏のブログでです。

4月14日(水)晴れ 「出版記念会」

 夜は『10代をよりよく生きる読書案内― 海外編―』の出版記念会だった。東京書籍から「国内編」に次ぐ2冊目として出した。1年間の企画と議論で出したからけっこうがんばった。海外編なので、自分としては、普段取り上げられないジャンルに目配りするつもりで探した。中でも韓国現代詩の『君がそぼ(原文ママ)にいても 僕は君が恋しい』(リュ・シュファ、蓮池薫訳)は見つけた時は本当にうれしかった。全ての中身はわかるとは言えなかったが、好きな詩がいくつか現れた。とてもすてきな、本の好きな仲間と過ごした時間が充実だった。10代に広がってくれるとうれしい。

(岩辺泰吏「岩辺泰吏の午後の歩き方」http://ameblo.jp/iwanabe/day-20100414.html


(二〇一〇年四月十六日)

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