連絡船 ── 亀山郁夫訳『カラマーゾフの兄弟』がいかにひどいか



亀山郁夫氏に呼びかける

 私の恐れていたことが着々と進行中のようですね。あなたはとうとう『悪霊』の翻訳にかかっているらしい。ついさっきネットでこの情報を読んで、声をあげてしまいました。最悪です。いったいどこまでドストエフスキーの作品を愚弄したら気がすむのか?
 亀山さん、あなたは『カラマーゾフの兄弟』をまったく読めていないまま、でたらめないいかげんな仕事をしました。懲りずに『罪と罰』まで手をつけてしまった。森井友人氏の「『罪と罰」ノート』」批判 ── 私は読んで、あなたが『カラマーゾフの兄弟』において、アリョーシャの「あなたじゃない」前後の時系列をまったく把握していなかったことを確信しましたよ ── は読んだんでしょう? うろたえたでしょう? そのまま『悪霊』ですか? やめなさい。あなたには無理だから。あなたにとってドストエフスキーは商売道具でしかないんだ。ドストエフスキーと読者を馬鹿にするのはもういいかげんにしなさい。もう目を覚ましなさい。あなたのすべきことは謝罪と撤退だけです。それはご自分でわかっているのじゃないですか? 私にこういわれて逆に闘志が湧きましたか? 今回のニュースでは、私にもかなり ── これまでで最高のものが ── 湧いているんですけれどね。悪いことはいいません。もうやめなさい。あなたには無理なんだから。無理だと、わかっているでしょう?
 もう私はあなたを批判 ── 批判の対象はあなただけじゃないですが ── することにうんざりしているんですよ。しかし、『悪霊』まで実際に出版されたら、私はこの先何年もあなたを批判することに時間と労力を割かなければならなくなります。そうしたくありません。『悪霊』翻訳は中止してください。
 そうして、できるだけ早く謝罪と撤退をしてください。

(二〇〇九年九月三十日)


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