「とつぜん甲高い銃声が聞えてきた」 二〇一二年八月二十五日、私の勤める書店にも最先端=亀山郁夫著『謎とき『悪霊』』の配本がありました。一冊だけ。ということは、大した刷り部数じゃありません(そのまま絶版となりますように! いやいや、回収してくれ!)。その一冊を私が買いました。まだぱらぱらとしか読んでいませんが、もちろん最先端=亀山郁夫は最先端のまま突っ走っています。ぱらぱらとしか読んでいないにもかかわらず、私はすでに突っ込みたいところをどっさり見つけているんですが、まあ、それらはおいおい、のんびりだらだらと詳述することにして、いまは一点だけメモのようにして書いておきたいと思います。 最先端=亀山郁夫がキリーロフの死の場面を語るところで自分の翻訳(光文社古典新訳文庫)から引用しているわけなんですが、次の通りです。
おいおい! 何だ、この ── 「とつぜん、甲高い銃声が聞えてきた」 ── っていうのは! ええ? 「銃声」が「聞えてきた」のかよ! さすが「あなたの前には、ほとんど越えがたい深い淵が立ちはだかっている」の翻訳者だ! 素晴らしいねえ! 同じ箇所を、同じ省略をしながら、先行訳から引用してみます。
|